貴方と向き合う方法 




「土方さん」
「悪い、また後にしてくれ」



「土方さん、お茶いかがですか?」
「いや、いい」


「おはようございます、土方さん!」
「………ん、ああ」





どうも最近土方さんに避けられている気がする。
おそらく、気のせいではないだろう。

ろうかですれ違っても目も合わせずに通り過ぎていくし、話しかけてもまともに
取り合ってもらえず、どこか上の空という感じだ。


「………何かしたのかな、私」


ぽつりと呟くと、背後から長い腕が伸びてきて千鶴に回された。



「どうかしたの、千鶴ちゃん」
「お、おお、沖田さんっ!?」
「何、悩み事?………ってそんなに逃げようとしなくてもいいじゃない」
「は、離して下さい!」


沖田の腕の中でじたばたともがく。しかし、女子供の力でその腕から逃れられる
はずもなく。


「……落ち着いた?」

まぁ、落ち着いたといえば落ち着きましたけど……。


千鶴が抵抗しなくなったのを見て、沖田が満足そうに笑う。


「で?どうしたの?」

優しく話しかけてくる沖田の声音に言葉が詰まる。
すると、沖田の端正な顔が千鶴の小さな耳にすっと寄ってきて、
「あれ、僕に隠し事でもするつもり?」
と、囁かれる。


「わ、わかりましたっ!話しますから!ですから離れて下さいっ!」


真っ赤になってうろたえる千鶴の反応に意地悪そうな笑みをみせ、沖田が
顔を離す。


遊ばれている気がしないこともない。
いや、絶対に遊ばれている……!!


「……土方さんの事なんですけど」
「土方さんの?」

沖田がその名を聞いて思わず眉をひそめる。


「……なんだか最近ずっと避けられている気がするんです」
「………ふーん…」

おもしろくないな、と低く沖田が呟いたのが聞こえ、千鶴に回されている腕の力が
強まる。
沖田が千鶴に背後から覆い被さるような格好になる。


「土方さんのことなんて気にしなくていいよ。それより、」

沖田が顔をまるで猫のように、首元にすり寄せてくる。
前髪が顎にさらさらと当たり、くすぐったい。

「僕、いま暇なんだ。遊ぼうよ」

………沖田さんと遊ぶって何をするんだろう。
……正直、あんまりいい予感はしない。


身の危険を感じて、はなしてください、と再度訴えようと口を開きかけたその時、

「離してやれ、総司」

いつもよりかなり低く、抑揚のない声が響いた。
久しぶりに聞いたその声に思わず心臓が跳ねる。


「ひ、土方さん」


その名を呼ぶと、土方はふっと二人から目をそらし、何事も無かったように
再び歩いて遠ざかっていく。


――――――――やっぱり、避けられている。そのことが心に深く深く刺さって、
息が詰まりそうで、痛い。


気がついたら、いつの間にか緩んでいた沖田の腕から飛び出していた。


「ひじかたさんっ!」

息を切らせてそう呼ぶと、土方が振り向いて目を見開く。

「千鶴?……何かあったのか」




私がこんなにあなたについて悩んでいたのに、


「どうして……気づいてくれないんですか…?」

無意識に恨み言のような事を口にしてしまう。しまった、と思ったときには
既に遅く、土方は感情の読めない目でこちらをじっと見つめていた。


その視線に言葉が出てこない。
代わりに出てきたのは頬をつたう大粒の涙。



あぁ、もう、どうしてなくの私。




しばらくの沈黙のあと、

「悪かった」

と、土方が確かにそういった。

そして長く角張った指を千鶴の頬に伸ばし、涙を拭う。
その優しい仕草にますますなにも言えなくなってしまう。


「……気に入らなかったんだよ、お前がほかの野郎どもと話してんのが」


思いもよらない言葉に今度は千鶴が大きく目を見開く。


「誰にでも愛想の良いお前にも苛立って……お前を避けちまってた。
 …悪かったな」



そう言って遠慮がちに抱きしめられる。それに抗う理由など、ない。

「……土方さんに……相手に、してもらえなくて、すごく、
悲しかった、です」


涙で視界がかすんで、声がかすれて、いっぱいいっぱいで、必死に言葉を
紡いだ。
そんな千鶴を理解しているかのように、土方はただ、千鶴の言葉を聞いていた。






「……しかし、」


2人の間にあった心地よい沈黙に土方が言葉を挟む。
千鶴が赤く腫れた目で、自分より頭2つ分ほど高い位置にある顔を見上げる。



「なかなかいいもんなんだな、お前に慕われるってのは」



意地悪そうな笑みを浮かべ、
「俺の事を想って泣くぐらいなら、俺のそばからはなれるんじゃねぇぞ」

と囁いた。



千鶴はゆるい動きで微笑んだ。






頼りになる、愛しい貴方の言葉なら、

「……わかりました」











Fin.....




はい、そこ沖田さんかわいそうっていわない←


ちなみにですけど、沖田さんは土方さんに言われたから千鶴を離しちゃったわけじゃありません。
土方さんに言われたぐらいじゃ離すわけないでしょw(笑


千鶴があんまり泣きそうなひどい顔をしてたから離してあげたんです
もちろん、我が家の沖田さんは千鶴を土方さんに渡す気などさらさらありません




だから沖田さんは書きやs(ry



inserted by FC2 system