風邪の熱(二) 








もう日も落ちてすっかり暗くなった頃、斎藤は千鶴の部屋に行ってみることにした。 
今日一日、昨晩千鶴に薬を与えた事についてうんざりするほど文句を言われた。 



薬を与えた事自体が悪いわけではないことは分かっている。 
用は『なんで斎藤が看病しているんだ、羨ましい』と言うことである。


 

彼女が苦しんでいるところをたまたま目撃したからだ、としか言いようが無いのだが、 
男どもは納得しようとしなかった。 



実際、俺以外が看病すると、看病以外にも余計なしなくてもいい事を千鶴にしでかすと 
しか思えない。

(ただ、平助は信用してやってもいいと思っている。) 


・・・・まぁ、俺自身、得をしたと思っていないと言えば嘘になるが。 





そんなことを考えつつ、歩いているといつの間にか千鶴の部屋にたどり着いた。 
・・・皮肉にもこの部屋の前を通るのがくせになってしまっている。 

そんな自分に心の中で苦く思いながらも部屋の主に声をかけた。 



「千鶴、起きているか」 



襖の前で、入室の許可をとろうとするが返事はない。 
・・・おかしい。部屋には確かにいるはずなのだが。 



「・・・・・・失礼する」 


もう一度きいてゆっくりと襖を開けた。 




月の光がほとんど差し込まないこの部屋。その中央にひかれた布団の上で 
千鶴は苦しそうに横たわって・・・・・・・いなかった。 



いるはずの姿が無いことに一瞬肝が冷え、慌てて部屋を見渡した。 
部屋の隅にうずくまっていた千鶴を斎藤が見つけるのが早いか・・・・・ 


否、それよりも素早く千鶴は立ち上がり、崩れ落ちるように。 
斎藤に抱きついた。 





あまりの突然の出来事を理解するのに斎藤は時間を有した。 
ようやく、千鶴に抱きつかれている、ということを自覚した。 


それと同時に女独特の甘く優しい匂い。脇腹あたりに回されている白く細い腕。 
真っ白な一枚の薄い着物ごしに伝わる体の線への感覚が斎藤に襲いかかった。 




時間がたっても一向に動こうとしない千鶴を見て、俺自身の顔が朱に染まっていくのが止まらない。 



だ、だめだ・・・・! 




この場を案じ、今動かせる理性と腕の力を総動員させて千鶴を引きはがした。 

やはり、男と女の力の差は歴然で、いともたやすく千鶴は引きはがされた。 




「・・・・・・・どうした」 




やや枯れかけた自分の声に、俺は今必死なのだと否応なく意識させられる。 
肩を力強く押さえられていた千鶴はいままで伏せていた顔をゆっくりと上げた。 




ああ、なんて妖艶な。 




高熱が体内に渦巻いているのであろうことが顔から感じられた。 



暗い部屋でもよく分かる、赤く火照った頬。呼吸が苦しいのか、しっとりと濡れた唇から聞こえる 
熱い吐息。


そして普段は強い意志のこもる瞳も、この時ばかりは細められて焦点が合っていなかった。 



思わず、呼吸することさえも忘れてしまう。斎藤が黙り込んでいると千鶴が息も絶え絶えに呼んだ。 




「・・・・・斎、・・・と・・・さんっ・・・」 



呼ばれた己が名に引き寄せられるように、理性が飛びそうになる。 




名前を呼ばれただけで。 
俺はこんなにも酔わされていたのか。 

自分の中での彼女への想いがくすぶる。 





まずい―――――・・・・! 




このままでは黒い本能に理性ごと飲み込まれてしまう・・・!! 





乗り越えてはならない一線の前で止まるように自分に言い聞かせて、力無く、押さえつけられていた 
千鶴を引き寄せる。 

「千鶴・・・・!」 





分かっている。 
彼女は熱で浮かされており、体調不良を俺に訴えようとしているだけだ。 
わかっているのだ。 





しかし――――・・・・ 
俺は素早く千鶴の首元に顔を寄せた。 
耳の裏に触れるか、触れないか、舌を走らせると千鶴が腕の中でびくっと跳ねた。 
その反応でさえも俺を誘う行為でしかない。 






無理だ。もう止まらない――――・・・・! 




千鶴にさらなる刺激を与えようと顔を近づけた瞬間・・・・ 









「何してるの?一君」 




朗らかだがハッキリと棘を含んだ声が背後から聞こえた。 




「・・・・・総司」 



内心、止めてもらえた事に安堵しながら沖田を見据えた。 




「彼女を離しなよ」 



ほとんど命令に近い口調で殺気をちらつかせながら斎藤に言った。 
斎藤が千鶴から手を離すが早いか、千鶴は焦点の合っていない目で部屋の外へと走っていった。 




その姿をあえて止めることなく、沖田が口を開く。 




「・・・・・・・さすがに体の回復は早いみたいだね。意識はまだ戻りきってないみたいだけど」 




斎藤の答えを求めていないのだろう、黙り込んだ斎藤を置いて何が楽しいのか、不敵な笑みを 
見せて沖田は千鶴の後をゆっくりと追った。 







Fin.....




斎藤さんのかわいさは異常だよねwうん 

ほわほわした千鶴ちゃんを見てムラムラすればいいよ(ry 

千鶴ちゃんを追っていった沖田さんは、千鶴ちゃんがいつもと違い 
意識が危ないことなんか気にしません。 

みつけたらここぞとばかりにど−−−ん(ry 
無理矢理することに意味がある。 

どんだけドSww 



かれらの理性が飛びやすいのは仕様ですww(おい


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