この気持ち、
武道場の裏で、せっせと手を動かしている彼女を見つけた。
「千鶴ちゃん」
名前を呼ぶと、はっとしたように振り向く。気配を消すのが上手い僕が、
近づいていたのに全く気づいていなかったみたいだ。
そして、僕と視線があうと笑顔を浮かべてくれる。
本当に可愛い。
「沖田先輩!……今、休憩中なんですか?」
「そうだよ」
千鶴ちゃんが居なかったから捜しにきちゃった、と続けると彼女の頬がみるみる
赤く染まっていく。
今時、こんなにうぶな女子高生なんているんだろうか。
きっと、この子ぐらいだろうと思う。
正直、いままで女子に興味が無かった。
好きな女の子なんてものも居なかったし、生まれてこの方、欲しいとも思っていなかった。
――――……君に出会うまでは。
同じクラスやこの学校内、それこそ日本中に女の子なんてたくさんいるのに、
だめなんだ。君じゃないと、惹かれない。
手に入れたい、愛したい、愛されたいってものがこんなに強い感情だった
って知らなかった。
君のその、揺れる艶のある黒髪や、眼を見張るほど細く白い腕や、赤い頬、
小さな手のひら、花びらのような赤い唇………
触れたくて、堪らない。
「あ、の……沖田先輩?」
僕の名前を呼ばないで。………もっと呼んで。
そんな瞳で見つめないで。………動けなくなる。
君をこの腕に閉じこめてしまいたい。
……君は僕を拒絶するかな?
「ねぇ、千鶴ちゃん」
「……はい」
きょとんと首を小さく傾げる君に、
「キスしても、いい?」
Fin.....
SSLの唐突短編です^^
たまたま沖田さんになったんですが、他の人バージョンや続編がみたいと言う方が
いらっしゃいましたら言って下さい!^^