二度と負けないから 



新選組幹部で最年少で。
はじめ、男装をした私を見て、言われるまで女だと気がつかなくて。
居心地の悪い思いをしていた私に、少年のような笑顔で話しかけてくれたあなた。


貴方への感謝の気持ちがこんなにも熱く焦がれる気持ちに変わっていたのは
いつだったんだろう。







「千鶴!」
「あ、平助くん!」

その日の鍛錬を終えて、道場の隅に控えていた千鶴に声をかける。

「はい、手ぬぐい」
「おっ、ありがとな」

にこやかに差し出す千鶴の手から手ぬぐいを受け取る。
その手ぬぐいには、ずっと抱えて待っていてくれたのだろう、千鶴の暖かさが
じんわり染みこんでいるように思えた。

熱を持った肌を拭き取ると、じっとりとまとわりついていた空気が晴れて
とても気持ちがいい。

「・・・・・・今日、いつもより厳しい鍛錬だったね」
「・・・・・・土方さんがピリピリしてるもんなぁ」



ふと、二人は土方に目をとめる。
彼は全体の鍛錬が終わった今も一人で刀をひたすらに振るっていた。
その姿から“焦り”や“殺気”がにじみ出ていることは、遠目に見ても
はっきりと分かる。


「・・・・・・あんだけ強いやつらみちゃったらな」

ピリピリするのも分かる、と苦笑いで言葉を切った。

藤堂が土方から目を背け、足下に視線を落とす。


・・・・・・きっと、平助君の言う“強いやつら”というのは“鬼”のこと。
人間でない彼らを前に、人間である新選組が打ち勝つのはそう簡単なことではない。

その“鬼”に為す術もなくあしらわれた藤堂の悔しさは、計りしれるものではないだろう。

いまだ傷の跡の残る藤堂の額にそっと手を伸ばす。
千鶴よりも若干高い位置にある額に指先が触れると、彼は大きく体を仰け反らせた。

「ち、千鶴!?」
「・・・・・・・・もう傷は大丈夫なの?」

千鶴の行為に心配という感情以外の他意はないことに気づく。
そして、残念そうな、もどかしそうな顔を浮かべ、居住まいを元に戻す。

「・・・・・・あん時はありがとな」

藤堂が池田屋での事を言っているのはすぐに分かった。
お礼を口にしているのに、目にまったく喜びの色が見えない。

千鶴はそんな藤堂を見ていられなくて、視線を泳がせた。

「・・・・・・・ううん。あの時、平助くんは勝手に飛び込んだ私を
庇おうとしてくれたじゃない。お礼を言わないといけないのは私の方だよ」
「でも、俺は結局、鬼に情けをかけられて、見逃されただけだから」


そう。
あの時は手も足も出ず、見逃された。
千鶴にあんな格好わりぃとこ絶対見られたくなかったのに。
俺のことを心配して駆け込んできてくれた千鶴に対して、来てほしくなかった、
というのはあんまりだ。

でも、結果として、相手が本気になっていたら千鶴を守ることさえ出来なかっただろう。
そんな、なにもできない、

「・・・・・・自分に苛々する」



俺は弱い。
一君や総司や左之さんや・・・・・・他のみんなと比べても、弱い。



今は。


目の前で、ただ俺の愚痴を受けてくれている少女を見つめる。
小柄な方の俺からみても、小さくて、儚すぎる千鶴。




毎日、ちゃんと鍛錬を積んで、もう誰にも負けたりしないから。


また、あんな屈辱を二度と味わうことの無いように、

「・・・・・必ず、強くなるから」

そして、お前を危険にさらす物から、

「・・・・・・・俺が千鶴を守ってやるよ」

俺の大事な物、すべて守ってやる。





だから、いつか。



その時が来たら、俺の中に疼く、この淡い気持ちに答えてほしい。

ただ、千鶴に、答えて、欲しいんだ。






Fin.....



なんか不完全燃焼w←

平助がこんなに難しいとは・・・・!!!w
普段とりあえず千鶴ちゃんをかわいがれば良いだけですからn(ry


この時、既に千鶴への想いを自覚してる藤堂。
え、たぶん、捏造です笑




でもかわいすぎるこのふたりいつかまたかきたいなこんどはちゃんとなっとくいくようにつくり
ますからゆるしてくださいはぁはぁ

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