贈り物 

「千鶴ちゃん、いる?」


聞き慣れた声を背中に受けてはい、と返事を返す。
「いい?入るよー」


返事をもらい少し弾んだような声で彼が入ってくる。


「どうかしたんですか?沖田さん」
「いや、ちょっとそこで拾ったんだけど」



そういって沖田が懐から何かを取り出す。白い紙で大事そうに包んであり何なのかは
わからない。いつの間にか沖田は座っている千鶴の目線に合わせて膝を立ててしゃがんで
こちらを見ている。


「・・・・・・・・・何ですか?これ」
「あれ?千鶴ちゃんのものだと思ったんだけど違うの?」


残念そうな声で少しも残念そうでない顔をしてそれを懐にしまい直そうとする。


「・・・・・・・それ、何なんですか?」
「気になる?」



千鶴が興味を持つのを待っていたように沖田が笑みを深める。
白い包みを見せられて気になるかと聞かれれば・・・・・・・ちょっと気になる。


「気に、なり・・・・ます」



私が完全に沖田に向き直ってその何かに興味を持ったのを見ると、沖田はその包みを
そっと解いた。その中には・・・・・・・

「かんざし、ですか?」
「あ、ほんとに千鶴ちゃんのものじゃないんだ」



本当に心当たりがなさそうな千鶴の顔を見て、沖田がわずかに目を見開く。


「誰の物なんですか?」
「うーん、それがわからないから千鶴ちゃんの所に来たんだけどな」
「あ、確かにそうですね」



かんざしを持っていそうな人なんていたとしても千鶴ぐらいだ。
しかもその千鶴でさえ男装をしている今は必要の無い物。




「じゃ、なんでこんな物が土方さんの部屋の前に落ちていたのかな」
「え、土方さんの?」



千鶴が不思議そうに聞き返したとき。



「総司―!どこにいる、総司!」


新選組、鬼の副長の声が屯所に響いた。ドスドスドス、という足音が近づいて来ているのでおそらく
この部屋にくるのじゃないんだろうか。

呼ばれている張本人の顔をまじまじと見つめる。



「・・・・・・・・・・沖田さん、また何かしたんですか」
「さぁ?僕は心あたりなんてないけど・・・・」
スパ―――――――ン!!!



壊れるんじゃないかというぐらい、勢いよく襖が開けられた。
廊下に立っていたのはまさに鬼の形相の鬼――――
「土方さん!」
「・・・・・・・・・・土方さん、女の子の部屋に断りも無しに入ってくるなんて
少々不躾なんじゃない?」



2人の言葉など聞く様子もなく、探していた人物を視野にいれると眉間の皺をより
一層深めた。


「総司・・・・・・・・・てめぇ、俺の部屋の前でなんか拾っただろ」


土方さんの部屋の前で・・・?落とし物・・・・?
私の視線が開いてあるかんざしに思わず向かう。



「あ、ひょっとしてコレのこと?」
沖田もかんざしを目で促す。



白い包みはすでに開かれており、かんざしと千鶴を交互に何度も見比べて・・・・・
状況を理解したのか土方さんが赤いような青いような顔になっていく。



「・・・・・・・これ、ひょっとして土方さんが使っているものなんですか?」



千鶴の質問で部屋の空気が完全に凍り付く。







「・・・・・・・・・いや、それはないでしょ、千鶴ちゃん」


沖田が口を思わず開いた。そして何を理解したのか沖田の口角が上がっていく。



「土方さん・・・・・ぬけがけは許せないなぁ」



沖田に黒いほほえみでそう言われて、土方があきらかにしまった、という顔になる。



「総司・・・・・・もうしゃべるんじゃねぇぞ・・・」



沖田に対して焦りの混じった殺気が発せられる。
それをものともせずに沖田は余裕の笑みを浮かべたままだ。



「いくらかんざしを贈りたくなるくらいかわいいからって・・・・・ねぇ、千鶴ちゃん」
「へ?」



千鶴はいきなり話を振られてあわあわと慌てている。
彼女なりに気の利いた言葉を言おうと考えているのだろう。







そんなところもかわいいんだけどね。
ただ――――・・・・この屯所にはライバルがおおすぎるな。
一人一人つぶさないと。







沖田は底の見えない黒すぎる笑みを浮かべながらそんなことを考えた。












それは、いつもの昼下がり。









Fin.....

あれ?なんかいつのまにか土方さんが出てきた 笑

どんだけ土方さんからませたいんだというw
最初は全然そんな予定無かったのに………


たぶん、いま作っているほうが沖千の裏なのでその反動でほのぼのしちゃいました。
いつ完成するかは今の所/未/定ww

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