主将の務め 










薄桜学園剣道部の主将たるもの、常に気を張って居なければならない。 

いつ、非常事態が発生するやもしれない上、誰よりも強くなければならない。 
俺はそう信じているし、実際に実行している。 


誰が見ても、隙のないようにと。 





……あとから思えば、自分自身に無頓着な俺は少し、気を張りすぎていたのかも 
しれない。 









「……先輩!斎藤先輩っ!」 
「………千鶴?」 



はっ、といつのまにか閉じかけていた目を開く。 
いつの間に。 
俺は先程まで素振りをしていたはず…… 



「斎藤先輩、大丈夫ですか?!」 
「…?……あ、あぁ」 




状況が飲み込めず、周りを見渡す。俺の足下には使い慣れた竹刀が落ちている。 





立ちくらみ、か。 
どうやら素振りの途中に貧血を起こしかけていたようだ。 
その様子を見ていた千鶴が急いで駆け寄って来てくれたらしい。 





………俺は自分で思っているより、疲労が溜まっているのかもしれない。 
そう自覚すると、心なしか視界がぐわん、と揺れた気がした。 



ぼんやりと靄のかかる意識を無理矢理振り切り、再び自主練習に励もうと 
床に転がる竹刀を拾い上げ―――…… 






一瞬、視界が暗く堕ちる。 
足がもつれるような感覚を覚え、身体が傾いて……慌てて床に手をつく。 
身体に衝撃がこない辺り、床に打ち付けられるのは免れたのだろう。 



……しかし、千鶴の顔が目の前にある。何故? 



「……っ、斎藤先輩っ!今日はもう練習止めてくださいっ」 
「………何?」 
「ふらふらじゃないですか……!休まないとだめですっ!」 



確かに。 
目の前で怒る千鶴の言うとおりだ。 
こんな状態では今から始まる本練習でも倒れることは目に見えている。 
気乗りしないが、しょうがない。 
今日は大人しく身体を休めて、明日また出直した方がいいだろう。 




……それで……なぜ、千鶴の顔が赤い? 




「……あの……」 


千鶴は気まずそうに眼を反らして、更に頬を赤く染める。 



………どうかしたのだろうか。 
そういえば、千鶴との距離が妙に近い。千鶴の瞳に俺の姿が映るのが分かるほどに。 


訝しんで、自分自身の体勢を確認すると。 



心臓が、大きく跳ねた。 



千鶴を押し倒して、その上に馬乗りになっている。 

まるで………襲っているようにしか、見えないのでは。 




「………!す、すまない!」 
「い、いえ」 





千鶴の顔が赤く染まった理由がやっと分かった。 
それと同時に俺の首筋も熱をもつ。顔が熱くなるのが自分でも分かる。 



素早く千鶴の上から退いて……… 



………千鶴の顔をまともに見ることが出来ない。 




俺のような無愛想な押し倒されて、千鶴は傷ついたかもしれない。 
こういう時、気の利いた言葉のひとつも出てこない自分自身がもどかしい。 
申し訳ない。 


きっと、俺の顔が燃えるように熱いのも、己の不甲斐なさを悔しく 
感じているから、のはず。 






不味い、俺は今、隙だらけだ。 







Fin.....




あれ、実は初斎藤さんだったりしますね!^^ 
正直なところ、いままで何本も書いてはいたのですが、いかんせん上手く出来た気がせず…… 
れっつご−とうお蔵。(おあ ダストボックス) 

いやはや、もったいないことしてるのかも。 
こんな奴がいるから地球があったかくなるんかも。 

彼は自覚したら歯止めがきかないタイプだといいなぁていうかそうします 


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