梅のお菓子 



もうすっかり冬が終わり、暖かくなってきた頃。
新選組の屯所の中庭に1人、男がたたずんでいた。

「土方さん!」

待ち合わせをしていた少女が笑顔でこちらに来るのをみて、思わず男の口元が緩む。

「いきなり呼び出してわるかったな」
「いえ、ちょうど仕事の無いときでしたので」
「ならよかった」

少女に無理をさせてまで、男のために時間を空けた訳では無いことを知り、
安堵の言葉が出る。

長身であり、新選組の『鬼の副長』とよばれ、
整った顔をいつになくほころばせる男――――・・・・・

土方は、千鶴に自分の隣に座るよう促した。
そしてその通りにちょこん、と座るのを確認して、四角い木箱を取り出す。


「・・・・・・・なんですか、それ?」
「お前と食べようと思ってな」

土方が箱を開けるとその中には・・・・・・
梅の形をした綺麗な甘菓子が2つはいっていた。

「わぁ・・・・!綺麗ですね!」

千鶴が思わず歓喜の声を上げる。その様子に満足した面持ちで、
土方が甘菓子の一つを手渡す。

「ありがとうございます!」

笑顔でお礼を言う少女を愛しく思い、その頭に手を伸ばそうとしたとき。

「あれ?千鶴―――――・・・・・と土方さんなにやってんだ」

前半は嬉しそうに弾み、後半は訝しげに背後から声が響く。

「あ、原田さん」

事も無げに振り向く千鶴の手元に原田の視線が落ちる。

「綺麗な菓子だな。どうしたんだ?それ」
「土方さんに今頂いたんです」
「・・・・・・・・。へぇ――」

不敵な笑みを浮かべながら原田が土方に目を向ける。

「・・・・・・・・なんか文句あんのか、左之助」
「いや、文句はねぇけどよ」
「・・・・・・なんだその手は」
「おれもここで千鶴と菓子をつまみてぇなと思ってよ」
「・・・・やりたいのは山々だが、生憎、2つしかねぇもんでな」

そう言い張る土方は、たとえいくつ甘菓子があろうと原田に渡す気はさらさら無い。

「あ、あの、よかったら原田さん、私の分をあげましょうか?」

2人の様子を見ていた千鶴が、そんなに食べたいのでしたら、と付け加え言う。


……千鶴、左之助は本当に菓子がほしいわけじゃねえよ。



「・・・・・・・・・・・・・鈍い」
「ああ。・・・・・・・相当鈍いな」


呟いた土方に原田がうんうん、と賛同する。眉間に皺を寄せている2人を見て
千鶴が慌てる。


「えっ!?私、何か悪いことしましたか?」
「・・・・・・・・いや、人様に物を譲ること自体は悪い事じゃねぇ。が、
菓子をお前にやった俺の気持ちも考えてくれ」

土方の言葉に千鶴がハッとする。

「す、すみません・・・・・・・・・・じゃあ、私の分を原田さんに差し上げます」

いや、さっきと言ってることかわんねぇよ!と言おうと口を開くのを千鶴の言葉が
遮った。


「そして、私には土方さんの分のお菓子をすこし分けてもらえませんか?」


思わぬ千鶴の提案に開きかけた口を閉じた。
滅多にない千鶴の甘えに土方の双眸が細まる。


「・・・・・・いいぜ、それで。・・・・・ほら、千鶴、口を開けろ」
「へ?」

なぜ、菓子は土方の手にあるのに私が口を開けるのだろう、と思って居るであろう
千鶴が不思議そうに声を発した。

「俺の菓子をもらうんだろ」


俺が食べさせてやるから口を開けろ、と千鶴に菓子を近づける。

「えっ!?」

再度驚きの声をあげ、土方が迫る分、千鶴が顔を赤くしながら退く。

「・・・・・・・土方さんの手からだったら食べたくねぇんだよ、きっと」
「うるせぇ。てめぇは黙って菓子食ってろ」

ちょっかいをいれる原田にはっきりと言い放つ。

「じ、自分で食べられます!」
「ほう、俺の言うことがきけないと」
「そう言う訳じゃないですけど・・・・・!」


土方が譲らずに千鶴に再び菓子を押しつけると、観念したのか、
ゆっくりと菓子を一口、頬張った。

「・・・・・・よし、良い子だ」


そういって頭をわしゃわしゃかき混ぜても千鶴は顔を真っ赤にしたままだった。


その後、春の中庭では男女が並んで菓子を食べる姿がよく見られるように
なった。2人を妨害する男が何人もいた、ということだが。




Fin.....



あれ?なんか原田さんかわいそうww

原田さん大好きなんですけどねー?w

こういう簡単に千鶴に絡んで来る原田のようなキャラはありがたいww
(なんでもさせられるかr(ry

とくに沖田。沖田はいいです!(使い勝手が)w




おかげで18禁がすいすい書き上がる!!!藁

沖田一人に良い想いはさせる気は毛頭ございませんけどww

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