ようこそ!薄桜学園☆ 






「失礼します」
「…失礼しまーす」



薄桜学園の教師達が集まり、くつろいだり生徒指導に勤しんでいたり……職員室。




あまりお世話になりたくないその場所に千鶴と平助が足を踏み入れる。
今朝の遅刻の件で、担任の土方に呼び出されたのだ。



職員室内をざっと見渡すと、あちらこちらで怒られたり褒められたりしている生徒が
ほかにもいた。


お目当ての人物が椅子に腰掛けている姿を見つけ、近寄って後ろから声をかける。




「あの、土方先生」
「お、平助と千鶴か」



集中していたのか、机に噛みつくようにべったりと張り付いていた土方が、手を止めて
二人に視線を移す。


「じゃ、これを生徒会室まで持っていってくれ」



そう言って床にうずたかく積まれていた大量の書類をどさっと二人に手渡す。
見た目を裏切らない重量が腕にかかる。
相当な量があるが……。



「へ、平助くん、大丈夫…?」



千鶴に手渡された書類は全体の三分の一にも満たない。
残りの三分の二はさも当たり前とでも言いたげに平助に押しつけられる。


高校生ともなれば、このぐらいの性差をつけられるのも納得は出来るのだが……



「お、おも………っ!」
「……平助くん、少し持とうか?」



心配そうに平助を気遣う千鶴がその荷物に手を伸ばそうとする。
しかし、平助が何かを言う前に土方が千鶴の手を掴んで止めた。



「気ぃ遣う必要ねぇぞ、千鶴。平助が何のために朝から晩まで部活してると
 思ってんだ」


土方の言い分はもっともらしく聞こえる。
だが。



「……別に荷物運ぶために部活してる訳じゃないし…」



平助の呟くような反論はまるで聞こえていないかのように無視される。



まぁ、確かにこの荷物を千鶴に持たせるのは男として、かっこわるい。





「じゃ、頼んだからな」



あまりの荷物の重さによろけそうになっている平助の背中を土方がばしばしと叩く。




嫌がらせかよ………いや、嫌がらせ以外の何者でもないだろう。
平助の抗議も口から出る前に自己完結されてしまう。




諦めるしかない、と平助が大きくため息をついた。












職員室を後にして、生徒会室へと急ぐ。
何故かは知らないが、薄桜学園の生徒会室は一般の教室と隔離されたような位置にある。




生徒会室なんて平助からすると興味もないし、どこにあろうと知ったことでは
無いのだが、この時ばかりは生徒会室が校舎の五階にあることをひどく
恨んでしまう。




「……もう、部活はじまっちゃったね」



平助に比べると何倍も荷物の少ない千鶴が腕時計に目をやりながら呟く。
語尾が高く上がったことから、こちらの相づちを求めているのが分かった。




「だなぁ……さっさと終わらせて部活行こうぜ!」
「うん!」



元気よく二人は顔を見合わせて笑い、生徒会室へと足を速めた。






この後、平助と千鶴は生徒会室へと向かったことを深く後悔することとなる。






Fin.....





すいません、めっちゃ短編で^^;

なんでかっていうとここで止めないと区切りが悪いんです;
次が長くなっちゃうかもしれなかったんで!



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