湯気に映る君。 





「・・・・・・明日、腰が立たねぇようにしてやるよ」


余裕のない笑みを顔に浮かべ、だけれどもはっきりと原田が囁いた。
それと同時に強く抱きしめられる。


千鶴の身体を固く拘束する、この腕に私は守られているのだ。
日の丸の国で身を潜めていたときも、そしてきっとこれからも。


既に熱が絡んでしまっている意識で、おずおずと原田の背中に手を回す。
抱きしめて、包み込むなんて、私の弱い細腕ではできないけれど、これが私の精一杯。


程なくして原田の手が、千鶴の背中、脇腹、腰をなで始める。

優しく動くその手には最早、愛しさしか感じない。
だんだんとその手が卑猥に動きを変えても、千鶴は抵抗らしい抵抗など出来るはずもなく。



女性としての身体を包んでいる薄い手ぬぐいは、じっとりと濡れてしまって
身体を隠す、という本来の機能を失ってしまっている。

逆に、薄く浮き出る2つの赤い蕾や身体の線が透けて、なんともいやらしい。


原田の手が、千鶴の胸元にある手ぬぐいの結び目でふと、止まる。

一度、千鶴の目を見つめ・・・・・・いつもなら肌を露わにさせることの確認を取る
原田も、今ばかりは何も言わずに結び目をほどく。



戒めを静かに取り払うと、いままで幾度か目にしてきた白い肌は予想通りにそこにあり、
味わってやりたい、という衝動に胸が高鳴る。


本当に―――――・・・・・生まれたままの姿をしている非力な彼女。
原田がほんの少し、力を込めただけでも動けなくなり、逃げられなくしてしまえる。


華奢で小さすぎるその肩に、首に、腰に・・・・
かぶりついてしまえば、食べてしまえそうだ。

頭から骨までかみ砕いて、本能のままに食料の糧としてしまえばどんなに幸せだろう。


そんな狂気めいた感情が胸に静かに押し寄せる。


歯を立てるようなことはせずに、露わになった肌に堪らず口寄せる。


千鶴の小さな身体を余すところ無く、指と唇で愛撫していく。
そのたびに千鶴から小さく声が漏れる。


「あっ・・・・・あ・・」


しゃぶりつくように千鶴の身体を、夢中で貪る原田はまるで獣のようで。


そんな自分を自覚し、原田が思わず自嘲的な笑みを浮かべる。

ただひたすらに、降り注がれるくすぐったいような感覚に耐える千鶴は原田の笑みには
気がつかない。


千鶴が立派な女である印の2つの膨らみに手を這わす。
既に赤く固くなっている頂に、そっと舌で触れると千鶴から弱々しい嬌声が聞こえる。
口に含み、弄ぶように舌先で転がしてやるとその声は大きくなるばかり。


わずかに千鶴の声が籠もっていることに気づき、視線を上げて、千鶴を見つめる。


「・・・・千鶴」

言い聞かせるように名前を呼ぶと、千鶴の身体が大きく揺れた。
千鶴は細い腕と小さな手のひらで、真っ赤に染まっているのだろう、その顔を
必死に隠している。

「千鶴・・・・・なんで、顔を隠すんだ?」


優しく囁きながら、白い腕に顔を寄せていくつも口付けを落としていく。
その一つ一つに千鶴が敏感に反応して、肩を震わせる。

そんなに必死に顔を隠されると、逆に顔を見てやりたくなってしまう。

「どうしたんだ?」
「・・・・・・・は、」


言いかけた言葉を息だけで飲み込む。
最後まで言わせるつもりの原田は何も言わずに千鶴をじっと見つめる。

「・・・・・恥ずかしいん、です・・・・」

すぐによく分からなくなっちゃうから、と消え入るように呟いた。
確かに、原田が休むことなく愛撫を続けるから千鶴はすぐに我を忘れてしまう。

そうなってしまったときの千鶴は、どうしようもない幸福感に満たされ、乱れて・・・
原田をもっと、求めてしまう。
それが堪らなく恥ずかしい。


自分の本音を途切れ途切れに口にする千鶴に思わず原田が頬を緩ませ、


「・・・・そんなお前が見たくてしてるんだけどな」
「え・・・」


原田の行動の意図がまったく予想できないものだったのだろう。
白い腕のすきまから気の抜けた声が聞こえた。


千鶴があっけにとられている、そのわずかなすきを原田が見逃すはずもなく、
力づくで2本の腕をこじ開ける。


あらわになった、真っ赤になって目を大きく見開く顔に原田が強く口付ける。
いきなりのことに、千鶴がさらに目を丸くする。

「・・・・・・お前を見てると、どうしても好きなようにしてやりたくなるんだよ」



そうだ。
心底惚れた女が自分の腕の中で乱れていて、冷静でいられる方がおかしい。
そのことを全くわかっていない千鶴に小さくため息をついてしまう。


いつまでも初心を忘れずに初々しい反応を返す千鶴は堪らなく愛らしいと思うが、
何につけてもこうも恥ずかしがられては何もできなくなってしまう。


だからといって事を途中で止める気は更々無いのだけれど。


整った顔立ちに映える、原田の優しいまなざしが急に意地悪そうな光を帯びる。

「・・・・・そんなに俺に顔を見られたくねぇか」
「・・・・ご、めんなさい」

小さく謝りながら頷く千鶴は、原田の真意に気づかない。
怪しく光を携えた原田の瞳は獲物を捕らえた肉食動物のようで。



突然、原田が千鶴の細い腰を捕まえ、引き寄せたかと思うとくるり、と回した。
目の前にあった原田の逞しい胸板が、一瞬で浴室のひんやりとした壁に変わる。

千鶴を回した張本人である原田は当然後ろに居るわけで。
先ほどと変わらず、千鶴を壁に追いつめる。


違うのは、互いの顔が見えないということ。


「さ、さのすけさん・・・・?!」
「・・・・・」

何の前触れもなく変わった体勢に頭が追いついていないのか、千鶴がおろおろと
不安を口にする。

勿論、返事なんかしてやらない。


代わりに壁に手をつくほか無くなっている千鶴の両手に手を重ね合わせる。
長身である原田が小柄な千鶴と姿勢を合わせようとすると、後ろから覆い被さる形に
なってしまう。


「・・・・これだったら、恥ずかしくねぇだろ?」




―――――・・・・恥ずかしい・・・!

顔が見えなくなった分、まるで身体を差し出しているように思えて逆効果としか
思えない。
千鶴の耳元で囁く原田も、千鶴が恥じるのを分かっていてわざとやっているのだろう。
今更原田の思惑に気づいたところで何も出来ることはなく、既に遅いのだが。


「さ、左之助さんっ意地悪ですっ・・・!」
「・・・・・・そんな可愛いこというと、虐めたくなるだろ?」

千鶴の精一杯の反抗も、原田を煽る物でしかない。
囁きながら千鶴の形の綺麗なうなじに口付けを落とす。

「やっ・・・・」

小さな行為一つ一つにも千鶴は過剰に反応を示す。

千鶴から漏れる甘い声を全身に感じ、原田の半身が熱く疼いて叫び始める。


背後からもたらされる刺激に慣らされていない千鶴は、原田の愛撫の手に
合わせて身体をよじる。
くすぐったいような快感に必死に耐える千鶴の声が何度も浴室に響いた。


ただひたすらに背中、脇腹、腰に手を這わせていた原田が、太股に手を移す。
そのまま足を伝い、徐々に根本へと近づいて行き・・・・・
千鶴の一番敏感な場所へとたどり着くのに、そう時間はかからなかった。


「あっ・・・・やっ!」
「・・・・・嫌じゃ、ねぇだろ?」

口角をつり上げて千鶴に意地悪く聞き返す。
何も答えずに口を結ぶ千鶴の濡れそぼった花弁にそっと指を伸ばす。


原田の指は千鶴の指に比べて、ずいぶんと長く、逞しく、堅い。
後に千鶴の奥へと押し込まれるものを、嫌でも連想してしまう。


原田に弄ばれるのを期待するように、千鶴が身体をこわばらせた瞬間、
花弁にそっと触れる愛しい指先の感覚に、背筋に戦慄が走る。


いきなり中に入るような事はせず、千鶴の奥へと続く入り口を焦らすように
ゆったりとなぞる。


「千鶴、もうちょっと足を開いてくれねぇか」


壁に寄りかかるようにして立っている千鶴は、おとなしくその指示に従う。

貪欲にも、千鶴の身体は今か今かと原田を待ち望んでおり、そのことを自覚
してしまうと、千鶴は羞恥心で身が焼けそうになる。

差し込まれた原田の指とともに浴室に響く、粘着音。
恥ずかしさで死んでしまいそうになるが、今はそんな感情でさえも千鶴の感度を
よくするばかりで。


「・・・・・・すげぇ濡れてる。・・・・・やらしいな、千鶴」
「っ、は、はず・・・・かしいで、す」

からかう原田に切なげな吐息も混じりながら答えるが、その間も原田の指先が
千鶴を犯し続ける。

「あ、あっ・・・・んっ、」
「・・・・・・いいな、そういう声」


呟く原田の声には明らかな愉悦の色が浮かんでいる。
何度も抜き差しを繰り返すと、千鶴が一際反応を示す箇所があった。
そこを執拗に攻める。

「やぁ・・・・・!は、原田さぁっ」
「・・・・・『左之助』。・・・・・・なんだ、もっと虐めてほしいのか?」


しつこく攻めあぐねていくと、千鶴は浴室の熱気と原田から与えられる快感に耐えかねて
必死に壁にしがみつく。

指先が白くなるほど力を込めている千鶴に対して、愛しさの他に征服欲が沸いてくる。


快楽の絶頂に昇らされて、千鶴の漏らす言葉は意味を為さない断片ばかり。


触れたくて、唇を這わせたくて、我を忘れるまで壊してやりたかった千鶴の身体が
目の前で卑猥に乱れる様子に、原田自身も我慢の限界だった。


千鶴の中から指を抜き去り、すばやく、半身を覆う手ぬぐいを取り去る。
薄い鎧をはずしたその下では、原田の愛欲が大きく誇張していた。



早る衝動を抑えるように、千鶴の腰をつかんでわずかに上に持ち上げる。
原田は、千鶴がせがむ場所へとゆっくり、自身を沈めた。

「あっ・・・・・!んうっ・・・・あぁっ」


息も詰まるような圧迫感を感じ、千鶴が眩しそうに目を細めて喘ぎを漏らす。

すでに原田によって教えられた身体は、異物が侵入する痛みでさえも快楽と
すり替えてしまうようだ。


久しぶりの中は、入りきるには狭く、締まっていた。
ほどよく刺激を与えられる原田の顔からは、既に余裕の色が消え去っている。


気持ちが良くて、更に千鶴を求めてしまう。



もっと高みへと昇り詰めるために一度抜き去って・・・・再び貫く。
次はもっと奥へ。


最初のうちはゆったりと動かされていた行為も、だんだんと速さを孕んでいく。


「さ、さのすけっさ・・・・んっ・・・・さ、の」


心地良い痛みからか、愛楽からか。
千鶴の目尻から涙が頬を伝っていく。


つながったまま連動を止めない2人の間から、ずぷり、という淫乱な水温が何度も浴室に
反響し、千鶴の聴覚を犯す。

「あ、ぁっ・・・・・!さ、のすけさ・・あ・・・ん、」
「っ、ち、づるっ」


肌が何度も打ち合い、その音が意識に白みをかけていく。

必死に甲高い嬌声をあげ、ただただ左之助の名を呼ぶ千鶴に、原田も答えていく。


何度も原田自身が抜かれ、再度貫く事を繰り返し、一瞬。


原田が、千鶴の最も深く、卑猥な場所を、躊躇いなく貫いた。




「・・・・・ぁ・・!」
「・・・・・・っく、あ」


ふるり、と千鶴が目を見開いたまま、身体を震わせた。

途端に千鶴の締め付けが強まり、原田の敏感なものが過剰に反応する。


「・・・・・・っ、わるい、我慢できねぇっ・・・」




切なげに、苦しげに、諭すと、
原田は千鶴のなかで果てた。











いまだ、ほとほりが冷めきれずに、小さく痙攣する千鶴を優しく撫でる。
汗ばんだ肌に吸い付いている髪の毛をそっと手で払ってやって、額に唇で触れた。

今となっては何を言っても遅いが、本当に風呂場で抱くつもりは無かったのだ。

原田の宣言通り、千鶴は腰が抜けてしまい抱きしめられていなくては立てない状態。
千鶴に負担をかけてしまったことは一目瞭然であり。



俺は自分で思っている以上に骨抜きにされているらしい。
滑るような肌をみて、理性がとんでしまうほど。

「・・・・悪いな、千鶴」









もう手加減なんか出来そうにない。




Fin.....


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